2012年05月20日

戦後の大衆文化
2012年5月19日(土)・20日(日)
近年復元された『サザエさん 七転八起の巻』『煉獄に咲く花』ニュープリントに加え、今は見ることができない戦後の風俗を活写した『女体の放射能』『七彩の花吹雪』を併映。荒井良平、西河克己、石山稔らベテラン監督の力量を確認しよう。

Aプログラム
「サザエさん 七転八起の巻」
(1948 / 53分 / 35mm)
監督:荒井良平 原作:長谷川町子
脚本:京都伸夫 撮影:藤井春美、平野好美
音楽:服部良一
出演:東屋トン子、木野浩、宮城千賀子、滝沢静子、沢蘭子
国民的人気漫画「サザエさん」の日本初の実写映画化。雑誌記者をしているサザエさんが、友人の妹の入院費を捻出するために奔走するという物語。服部良一が作曲した軽快なレビューシーンがふんだんに盛り込まれている。日活京都時代劇映画の巨匠、荒井良平がマキノ真三と宮城千賀子夫妻が設立したマキノ映画で手がけた現代劇。東屋(あずまや)トン子は宮城千賀子と宝塚歌劇団の同窓生(旧芸名・東屋鈴子)で、マキノ映画での荒井良平の前作『ゴムまり』に出演、その役名であるトン子に芸名を改めた。

 
Bプログラム
「煉獄に咲く花 」
(1953 / 38分 / 35mm)
監督:石山稔 脚本:山田良平
撮影:布施福松 音楽:浦上鐘一
出演:鈴木暁子、原惠子、久世まゆみ、大倉節美、三船あき子
ある売春婦の手記を映画化したもので、水害で家族を失い東京に出てきて路頭に迷っていたところ、声をかけてきた親切そうな女に騙されて娼婦に転落した女と、貧しい漁村から病身の母の治療費をかせぐために東京に出て娼婦になった女を主人公に、人身売買の悲惨な実体を批判する映画。「衆議院参議院婦人議員推薦」と字幕が出る。監督は帝キネ、松竹下加茂、河合、大都などを渡り歩いたベテラン石山稔。
 
「女体の放射能」
(1950年代 / 10分 / 35mm)
和製短篇ヌードショウ映画。音楽に合わせ舞台上で繰り広げられる裸体の乱舞。製作会社、制作年、スタッフなど詳細不明。フィルムには「女体の放射能」とタイトルが出るが、フィルム缶には「女体放射能」と書かれている。「女体放射能」と同一作品なら1957年に上野ニュース館、1959年に新橋名画座で上映された記録がある。
 
「七彩の花吹雪」
(1953 / 20分 / 16mm)
監督:西河克己 撮影:高村倉太郎
出演:川路龍子、曙ゆり、小月冴子、南條名美
宝塚歌劇団、日本歌劇団(OSK)と並ぶ日本三大少女歌劇団のひとつ、松竹歌劇団(SKD)の定期公演「第22回東京踊り」の記録。東洋一を誇る浅草の国際劇場の舞台に繰り広げる歌と踊りの一大絵巻。当時、日本情緒溢れる派手なレビューで東京観光の目玉にもなっていた。監督は裕次郎、小百合、百恵などスター主演映画のベテラン西河克己。

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア700円

《割引》2プログラム目は200円引き

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2012年05月27日

映画館の闇 『映画を見に行く普通の男』刊行記念
2012年5月26日(土)・27日(日)
ジル・ドゥルーズの大著『シネマ』の中で、フランスの映画論の中でもとりわけ詩的なものとして挙げられているジャン・ルイ・シェフェールの『映画を見に行く普通の男』の翻訳書が現代思潮新社より5月に刊行される予定です。
これを記念し、本書で取り上げられている作品を集めました。映画館の「本当の闇」を体験してください。
 
[関連企画] 5月26日(土)
神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第9回 映画の夜と戦争③_『映画を見に行く普通の男』
ゲスト:丹生谷貴志 聞き手:井上正昭


Aプログラム
「巨人ゴーレム」
Der Golem, wie er in die Welt kam
(ドイツ / 1920 / 86分[18fps]/ サイレント / 16mm)
監督:パウル・ヴェゲナー、カール・ベーゼ
原作:グスタフ・マイリンク
脚本:パウル・ヴェゲナー、ヘンリク・ガレーン
撮影:カール・フロイント
出演:パウル・ヴェゲナー、アルバート・シュタインリュック、リダ・サルモノヴァ
 
ユダヤ教の伝承に登場する泥人形ゴーレムに材を取った物語。1915年、1917年に次ぐ3度目の映画化。
 
“その彫像が完遂されることへの欲望はもはや後退し、ただ唯一なる神に見捨てられた男が一人、人間のかたちが生成すべき場所に無意味に触れ続けようと祈念しているだけのような具合で、或いはどうにも出来ないほど大きすぎる人形を与えられて放りっぱなしにされた幼児のような具合で、そしてしかし、その虚しい遊びは不意にあやかしのように完遂されるのです。”
(『映画を見に行く普通の男』より)

 
Bプログラムローレル&ハーディ集(日本語字幕無し)
「二人の水兵 」Two Tars
(1928 / 21分 / サウンド版 / 16mm)
監督:ジェイムズ・パロット
監修:レオ・マッケリー
撮影:ジョージ・スティーブンス
出演:スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ、セルマ・ヒル、ルビー・ブライアン
 
「リバティ」Liberty
(1929/ 19分 / サウンド版 / 16mm)
監督:レオ・マッケリー 撮影:ジョージ・スティーブンス
出演:スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ、ジェイムズ・フィンレイスン、トム・ケネディ
 
「ビッグ・ビジネス」Big Business
(1929 / 19分 / サウンド版 / 16mm)
監督:ジェイムズ・ホーン 監修:レオ・マッケリー
出演:スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ、ジェイムズ・フィンレイスン、タイニー・サンフォード
 
チビではにかみ屋のローレルと巨漢で気むずかし屋のハーディの極楽コンビのよるスラップスティック・コメディ。

“彼らの言葉は互いの間を表面だけ引っかけて飛び交うだけでその背後には何も無く、僕らに向けてではないから僕らにはもっと無意味で、要するに一種の言葉以前の言葉、元から何も理解する気のない意味不明の言語学の徒であること。この二人組は、互いを互いの悪夢とする……のではなくて、互いに相手を自分がそこから誕生するべき胎盤にして作者とする─そんな具合に二人なのである。”
(『映画を見に行く普通の男』より)
 

Cプログラム
「吸血鬼」Vampyr
(ドイツ・フランス/1931/ 70分 / 16mm)
監督:カール・テホ・ドライヤー
脚本:カール・テホ・ドライヤー、クリステン・ジュル
音楽:ウォルフガング・ツェラー
撮影:ルドルフ・マテ
出演:ジュリアン・ウェスト、アンリエット・ジェラール、モーリス・シュッツ
 
カール・ドライヤー監督が『裁かるゝジャンヌ』に続いて手がけた幻想的な怪奇映画。
 
“吸血鬼を死なせるのに余計な儀式など要らないのです。自らは時間を表出することのない画像-身体をフィルムの回転という時間の中に巻き込み、そしてそれを映写機の中に─粉挽き小屋の中に─閉じこめるだけで、吸血鬼を栗鼠を、誰かを[何かを]死に至る仮死の中に投げ込むのに充分なのです。”
(『映画を見に行く普通の男』より)
 

Dプログラム
「フリークス」Freaks
(アメリカ / 1932 / 60分 / 16mm)
製作・監督:トッド・ブラウニング
原作:トッド・ロビンス
脚本:ウィリス・ゴールドベック、レオン・ゴードン、エドガー・アラン・ウールフ、アル・ボースバーグ
撮影:メリット・B・ガースタッド
出演:ウォーレス・フォード、オルガ・バクラノヴァ、ロスコー・エイツ、レイラ・ハイアムズ 、ハリー・アールズ
 
見世物小屋で奇形を売り物とするフリークスたち。公開当時、各地で上映禁止となったカルト作品。
 
“同じものなど何一つないのに似ている、そのことだけで出来た世界、似ているのに同じではない、同じではないのに似ている、これがこの世界の狂気であり、この世界は合せ鏡状の永遠に似ているのであり……そのことがこの世界の恐ろしさを成すのである。”
(『映画を見に行く普通の男』より)
 
 

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア700円

《割引》
2プログラム目は200円引き
[レクチャー:第9回 映画の夜と戦争③_『映画を見に行く普通の男』] 参加者は1プログラム目も200円引き

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2012年06月12日

ハードゴア・スリラー「セルビアン・フィルム」
2012年6月8日(金)〜12日(火)19:00〜

 
世界中の映画祭が狂乱し、騒然となった! 
ここにノーカット版が日本、解禁!!!!!

 
 
「セルビアン・フィルム」A SERBIAN FILM
(セルビア/2010/104分/ブルーレイ上映)
配給:エクリプス
監督・脚本:スルディアン・スパソイエヴィッチ
主演:スルディアン・トドロヴィッチ、スルディアン・スパソイエヴィッチ、セルゲイ・トリフュノヴィッチ、エレナ・ガブリロヴィッチ
 
*20歳未満の方はご覧いただけません。
 
 
ミロシュは元ポルノ男優のスター。現役の頃は幾多の女優をイカせ続けたが、今は引退し、美人妻と幼い息子を愛する平凡な家庭人になっていた。そんな彼の元に、昔なじみの女優から呼び出され、俳優の仕事をやらないかと誘われる。その仕事とは、外国市場向けの大掛かりなポルノ映画であり、かなりのギャラがもらえるという。何か怪しそうな感じではあるが、収入に困っていたミロシュは、その話に興味を持った。
高級車のお迎えが来て、ある大豪邸に連れて行かれる。その豪邸から謎の男が登場する。ヴィクミルと名乗る男は、ミロシュを絶賛しながら、こんな話を始める。「私には大金持ちのクライアントがいて、彼らの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画を撮りたい。そのためには貴方の出演が絶対なのだ!」と。具体的な内容の話もなく、ミロスは高額な報酬に釣られ契約書にサインしてしまう。これが、悪夢と狂気な世界への入り口であった・・・・。
 
公式サイト
 
ドイツ ミュンヘン 国際批評家連盟2010 脚本賞
セルビア ヴルニャツカ・バニャ映画祭 2010 脚本賞
モントリオール ファンタジア映画祭 2010 新人賞
モントリオール ファンタジア映画祭 2010 観客賞(ヨーロッパ映画部門)金賞
モントリオール ファンタジア映画祭 2010 観客賞(革新的映画部門)金賞
アメリカ サウス・バイ・サウスウェスト映画祭正式招待作品
ベルギー ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭正式招待作品
エストニア ハープサル ホラー・ファンタジー映画祭正式招待作品
セルビア ノヴィ・サド映画祭正式招待作品
アメリカ アナザー・ホール・イン・ザ・ヘッド映画祭正式招待作品
カナダ モントリオール ファンタジア映画祭正式招待作品
韓国 釜山国際映画祭正式招待作品
イギリス ロンドン・フライトフェスト映画祭正式招待作品
フランス エトランジェ映画祭正式招待作品
ギリシャ アテネ国際映画祭正式招待作品
ドイツ ハンブルグ国際映画祭正式招待作品
イギリス レインダンス映画祭正式招待作品
 

《料金》
一般1500円 学生・シニア1300円
会員1300円 学生会員・シニア会員1200円

*20歳未満の方はご覧いただけません。

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2012年06月17日

初夏の名画座 ジャン・ルノワール 1
2012年6月16日(土)・17日(日)

「素晴らしき放浪者」
Boudu Sauvé des Eaux

(フランス/1932/84分/16mm)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
原作:ルネ・フォーショワ
撮影:マルセル・リュシアン
出演:ミシェル・シモン 、シャルル・グランヴァル 、マルセル・エニア、セブリーヌ・レルシンスカ、ジャック・ベッケル
 
セーヌ河に身投げしたブーデュ(ミシェル・シモン)を助けた古書店の主人は、彼を一家に招き入れる。しかし、自由人ブーデュは恩も感じずやりたい放題で……。
画家オーギュスト・ルノワールの息子として生まれ、ヌーヴェル・ヴァーグの父となったジャン・ルノワールの傑作。放浪者ブーデュの遺伝子は、グルジアの映画作家イオセリアーニなどにも受け継がれているだろう。
 
 
「ピクニック」Partie de Campagne
(フランス/1936-46/40分/16mm)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
原作:ギイ・ド・モーパッサン
撮影:クロード・ルノワール
出演: シルヴィア・バタイユ、ジョルジュ・ダルヌー、ジャヌ・マルカン、ジャック・ボレル 、ガブリエル・フォンタン
 
モーパッサンの短篇を下敷きにした作品。田舎にパリから遊びに来た家族を、陽光と水面の美しい情景とともに描く。撮影から10年の後、助監督だったジャック・ベッケルらが編集して完成させた。

[併映]「チャールストン」Sur un air de Charleston
(フランス/1927/25分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:ジャン・ルノワール 撮影:ジャン・バシェーレ
出演:カトリーヌ・エスラン、ジョニー・ハギンズ、ピエール・ブラウンベルジェ、ジャン・ルノワール
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
会員900円 学生会員・シニア会員700円
《割引》2本目は200円引き
*非会員のかたは、1日会員(登録料100円)のご登録でご覧いただけます。

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2012年06月24日

妄想の操り師 石井輝男
2012年6月22日(金)〜24日(日)
〈キング・オブ・カルト〉の石井輝男監督が、晩年に自らプロダクションを興し製作した3作品を一挙上映。フィルムによる保存を目的として作られた『盲獣vs一寸法師』の35ミリプリントを関西初公開する。
 
「山根貞男 連続講座 〈新編:活劇の行方〉 5」でも石井輝男を取り上げ、その活劇世界を論じていただきます。
[関連企画] [山根貞男 連続講座〈新編:活劇の行方〉5]
 
写真右:『盲獣vs一寸法師』撮影中の石井輝男監督 左:丹波哲郎
 
「盲獣vs一寸法師」
(2001/95分/35mm)
製作: 石井プロダクション
監督・脚色・撮影:石井輝男
原作:江戸川乱歩
美術:鈴屋港、八木孝
音楽:藤野智香
 
出演:リリー・フランキー、塚本晋也、平山久能 、藤田むつみ、リトル・フランキー、丹波哲郎、及川光博、しゅう、手塚眞、園子温、中野貴、熊切和嘉
 
江戸川乱歩の「盲獣」と「一寸法師」をもとにした猟奇ミステリー。石井輝男が製作・監督・脚色、そして撮影まで手がけた異色の自主製作映画にして遺作である。デジタルカメラで撮影された低予算映画ではあるが、石井輝男の職人的な演出術がきわだっている。フィルムによる保存を目的として今年2012年に作られた35ミリプリントで上映する。当時映画初出演のリリー・フランキーが主演。
 
「注目すべきは、呆然とするほど安っぽいのに、全篇、どの画面もきちんと形をなし、有機的な関係のもとに画面が展開されていって、運動感を刻み出すことである。だから、チープさにほとほと呆れつつ、見る人によるかもしれないが、馬鹿馬鹿しさを楽しめる。つまりショットが成立しているのである。そして、そのことはDVカメラで撮影されたという製作過程のあり方と何にも関係がない。」(山根貞男/「キネマ旬報」2004年5月下旬号「日本映画時評188」より)
 
 
「地獄」
(1999/101分/35mm)
製作: 石井プロダクション
監督・脚本:石井輝男
撮影:柳田友貴
音楽:竹村次郎
美術監督:原口智生

出演:佐藤美樹、前田通子、斉藤のぞみ、丹波哲郎、平松豊、鳴門洋二、大地輪子、若杉英二
 
世紀末の日本を騒がしたカルト教団、連続幼女殺害事件、毒入りカレー事件…。これら実際に起きた事件の犯人たちが地獄で裁かれる。石井輝男のキワモノ魂が炸裂。伝説のグラマラス女優・前田通子が閻魔大王を演じている。
 
 
「ねじ式」
(1998/85分/35mm)
製作: 石井プロダクション
監督・脚色: 石井輝男
原作:つげ義春
撮影: 角井孝博
美術:松浦孝行
音楽:瀬川憲一
 
出演:浅野忠信、藤谷美紀、金山一彦、丹波哲郎、アスベスト館
 
つげ義春の漫画4篇(「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎ屋主人」「ねじ式」)をオムニバス形式で映画化。主人公である売れない貸本漫画家ツベを浅野忠信が演じている。スーパー16ミリからのブローアップ。
 
「つげ義春も石井輝男も、明らかに現実体験にこだわるぶん虚構意識が強い。妄想性がそれを示している。
つくりものに対する尋常ならざる執着といいかえてもいい。つげ義春でいえば、なによりの現れは漫画「ねじ式」のデタラメなまでの超現実性であり、(略)それらはまさに夢でしかない荒唐無稽な世界だが、石井輝男はストレートに受け止め、忠実に模型やセットでスクリーン上に描き出す。」(山根貞男/「ねじ式」パンフレットより)
 

わが狂気をえがくためには、
  
 理屈はいらない、ストーリーもいらない、予算と役者はほどほどでいい。
 イメージさえあればいい───。
 石井輝男監督の遺作となった『盲獣VS一寸法師』は、2001年にビデオで作られたものだったため、なんとかフィルムで保存しておこうということになり、最近その試写が行われた。東映時代の問題作『恐怖奇形人間』(1969年)と原作が同じ乱歩ということもあって、32年の間隔はあるものの連作の思い入れがあったと考えられる。晩年、「キング・オブ・カルトムービー」ともてはやされていた石井さんは、本当に確信をもってわが狂気に向かい合っている。あんなにも折り目正しい紳士である石井さんに、その覚悟がごく自然に膨らんでいったのはなぜなのか。1950年代から60年代にピークを迎えた日本映画の一角を確実に支えた石井さんが到達した表現が女体であり、流れる血であり、バラバラにされた手と足だった。単なる猟奇趣味では決してない。一部の浮世絵にみられるような血みどろの世界、そして春画が石井さんの心象の奥に拡がっていたことは間違いない。彼は青春時代を浅草で過ごし、浅草で映画を学んでいる。あのダンディーは、江戸文化に裏打ちされていたのだ。
 「来なかったのは軍艦だけ」と言われた東宝大ストで、共産党にコリゴリという人達が新東宝に結集。石井さんもその一員。新東宝の組合は当初みどりの旗をかかげて東宝の配給網を支えていたが、経営側にも分裂が伝染して東宝と対立し、私たちが新東宝に助監督として入社した1955年頃にはもう赤旗を振っていた。その頃、石井さんはチーフ助監督。清水宏、成瀬巳喜男という日本映画の中軸ともいうべき監督に付いていた。57年に石井さんは監督デビュー、われわれは喜んで石井組に付いた。ところが配給網が弱体だった新東宝は、6社体制から弾き飛ばされて61年に潰れる。東映から移籍した石井さんは、しゃれたギャングものから『網走番外地』でヒットを飛ばし、68年から73年にかけ独自のエログロ路線を突っ走る。その東映京都撮影所で、石井監督排斥運動が起きたことも忘れられない。女優さんを裸にして縛り上げ拷問するとかいうことで、ハレンチに騒がれたのだが、石井さんはビクともしなかった。東映大泉からは小松範任・伊藤俊也両氏から京都批判が展開され、私たち新東宝時代の石井組の面々も両氏に共感した。撮影所の中で、監督の表現をめぐる排斥運動があり、撮影所横断的に石井監督支持の動きもあったという事実は正当に伝えられるべきだ。そうしたねじれの続く映画史の中で、石井さんはわが狂気の表現に到達した。上記の乱歩原作2作をぜひ見たうえで検証してほしい。
 
 山際永三(日本映画監督協会会報「映画監督」2011.9 №656より転載)


石井輝男(1924-2005)
清水宏や成瀬巳喜男などの助監督をつとめた後、1957年『リングの王者・栄光の世界』で監督デビュー。代表作に『花と嵐とギャング』(1961)、『黒線地帯』、『黄線地帯(イエローライン)』(1960)、「網走番外地」シリーズ(1965-67)などがあり、『徳川女系図』(1968)、『徳川いれずみ師・責め地獄』、『江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間』(1969)などの〈異常性愛路線〉が再評価され、〈キング・オブ・カルト〉の監督として人気を博す。90年代に入り、10年以上のブランクの後、映画界に復活し石井プロダクションとして3作品を自主製作した。


《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き

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2012年06月30日

転形期のインディペンデント映画
第1回 万田邦敏・小出豊作品集
6月29日(金)〜7月2日(月)
映画制作と上映のデジタルへの移行、そして見る環境の多様化により、いよいよ“映画”の転形期を実感する今日。とりわけインディペンデント映画の状況はダイナミックに変化していくことでしょう。
そんな来るべき新時代への期待をもって、このシリーズ上映を開始します。新たな才能を感じさせる若手の作品のほか、すでに商業映画の世界で活躍する監督が手がけた中短篇などを取り上げていきます。
自由な環境で作られるインディペンデント映画であるからこそ、作り手はそれぞれに映画の在り方を模索しています。この転形期に誕生した作品から映画の未来を見ていきます。

6月30日(土)15:40のCプロ上映後 参加無料・要当日の映画鑑賞券
トーク:万田邦敏監督 × 小出豊 監督
師弟対談が実現! 小出監督は万田監督に師事し、『接吻』ではスクリプター、TVドラマ『県境』、『一日限りのデート』では脚本を担当。映画作りの現場をともにする関係ならではの具体的なエピソード、そしてそこから浮かび上がる映画論が聞けることでしょう。


Aプログラム3本立て
「県境」
(2007/30分/DV)
製作:BS-i、ドリマックス・テレビジョン
監督:万田邦敏 脚本:小出豊
撮影:関毅 美術プロデューサー:平野裟一
出演:柳生みゆ、福本有希、クノ真季子、安田祥子、辰巳蒼生
蓮實重彦・黒沢清・青山真治の鼎談集「映画長話」でも話題に上った小出豊脚本、万田邦敏監督によるテレビドラマ。BS-TBS(旧BS-I)で放送されたTVドラマシリーズ「恋する日曜日」第3シリーズの一篇。田舎と東京に離ればなれになった思春期の男女を主人公にした青春物語。

「面影 Omokage」
(ベルギー・日本/2010/25分/DV)
製作:ベルギーフランドル交流センター
監督:万田邦敏 原案:濱本敏治
脚本:万田邦敏、万田珠実 撮影:高木風太
出演:ヤン・デクレール、小川尊、妻形圭修、西山真来、ジュン
ベルギーの名優ヤン・デクレールと万田邦敏監督のコラボレーション短編作品。原案を一般公募し、最終選考作品を『Unloved』、『接吻』と同様、万田珠実と万田邦敏が共同で脚色した。ベルギーの椅子職人エリックが大阪のギャラリーで若いアーチストの作品を見つめている。それは彼の息子ステファンが作った椅子だが、なぜ息子が東洋の外れまで留学に来たのか理解できなかった。彼が日本に来たのはその事実を確かめるためだったが…。
 
「絶対絶命」
(2011/20分/DV)
製作:映画美学校
監督:万田邦敏 撮影:岡地織江、山口裕輝
出演:横山真弓、柴山美保、河野マサユキ
映画美学校の第14期フィクション・コース初等科生と1日で撮った実習作品。

 
Bプログラム3本立て
「夜の足跡」
(2001/38分/DV)
製作:映画美学校
監督:万田邦敏 脚本:大城宏之、万田邦敏
撮影:瀬戸慎吾、川野由加里、小林妙子
美術:加藤慶子  音楽:青山真治、山田勳生、古池寿浩
出演:境利朗、浦工典、五味麗、山西由香
映画美学校第2期高等科生とのコラボレーション作品。父親殺しの過去をもつ青年を主人公にした短編ドラマ。音楽で青山真治が参加している。

「う・み・め」
(2004/28分/DV)
製作:映画美学校
監督・脚本:万田邦敏 撮影:芦澤明子
出演:小嶋洋平、四宮秀俊、長島良江、中村聡、三好紗恵
映画美学校第6期高等科生とのコラボレーション作品。ナンセンスな断片の連鎖より成る異色作。撮影は『Unloved』や黒沢清監督作品を手がける芦澤明子が担当している。
  
「×(かける)4」
(2008/38分/DV)
製作:映画美学校
監督:万田邦敏 脚本:福井早野香
撮影:山田達也
出演:砂野安紀、梓未來、苧坂淳、秋元貴秀、高森ゆり子
映画美学校第10期高等科生とのコラボレーション作品。高校生男女4人の掛け違いの恋模様。
  
 
Cプログラム3本立て
「綱渡り」
(2000/33分/)
監督・脚本:小出豊
撮影:篠原悦子、田中潤、池田道治、松野宏明 
美術:村上綾子、深田晃司 編集:筒井武文
出演:浅野翔太、松橋かずき、長谷川智也、若葉要、長谷川健、桑原修、伊原勉
小学生の葉一は精神的に不安定な母親と二人暮し。学校にも馴染めず常に自分の居場所がない。ある日、葉一は草原で傘を持って綱渡りをする男を見る。それ以来、葉一は傘を持って線の上を歩くようになる。転校した学校へ行く最初の朝、葉一は黒い傘を持ってバスに乗り、見知らぬ場所に向かう。小出監督の映画美学校修了作品。
 
「お城が見える」
(2006/11分/DV)
監督・脚本:小出豊
撮影:山岡太郎、深田晃司、四宮秀俊、川口力
出演:吉岡陸雄、おぞねせいこ、大谷伸
万田邦敏の呼びかけによる、仏教の十の戒律を題材にした自主制作オムニバス「十善戒」の中の一篇。男は妻に暴力をふるい、妻は息子に暴力を振るった。男は警察に連れられ大きな部屋でDV加害者に対する暴力防止プログラムを受ける。そこで男は自分が妻に振るった暴力をマネキンを相手に再現する。
 
「月曜日」
(2009/12分/DV)
監督・脚本:小出豊 撮影:白浜哲
音響:黄永昌
出演:竹厚綾、加藤真弓、石坂友里
万田邦敏の呼びかけによるオムニバス映画『葉子の結婚』の一篇。万田が「土曜日」、『MISSING』の佐藤央が「水曜日」の『結婚学入門(恋愛篇)』で参加。
 
 
Dプログラム
「こんなに暗い夜」
(2009/95分/DV)
監督・脚本:小出豊 撮影:月永雄太
音響:黄永昌
出演:宮本りえ、森田亜紀、吉岡睦雄、扇田拓也、新谷尚之、アイラ(犬)
第5回CO2エキシビション助成作品。倫子とアクツは石女(子供を産めない女)である。ふたりはその共通点から結託し、アクツの夫を殺害しようとする…。丹生谷貴志の「造成居住区の午後へ」(河出書房新社「死体は窓から投げ捨てよ」所収)に触発されて作られた作品。

《料金》
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 学生会員・シニア会員700円

《割引》2プロ目は200円引き


協力:映画美学校、BS-TBS、プラネット・プラス・ワン
 

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2012年07月22日

「マルグリット・デュラスのアガタ」
2012年7月13日(金)〜22日(日)[水・木休館]

「マルグリット・デュラスのアガタ」Agatha et les lectures illimitées
(フランス/1981/86分/35mm)配給:ジェイ・ブイ・ディー
監督・脚本:マルグリット・デュラス
撮影:ドミニク・ルリゴール、ジャン=ピエール・ムーリス
編集:フランソワーズ・ベルヴィル
出演:ビュル・オジェ、ヤン・アンドレア
声の出演;マルグリット・デュラス、 ヤン・アンドレア
 
愛の作家デュラス、「終わりなき朗読」
永遠の別れのために冬の海辺で再会をはたす兄と妹。二人の秘められた愛の記憶が、断片的な映像とデュラス自身の朗読によって語られていく。ジャック・リヴェット作品などで鮮烈なイメージを残すビュル・オジェとデュラスの当時38歳年下の恋人ヤン・アンドレアの美しい孤独と彷徨が、言葉とイメージ、身体と声、死と生、すべてのものがラジカルに分離する世界で描き出される。小説「愛人」や「ヒロシマ、モン、アムール」で著名だが、映画監督として『インディア・ソング』や『破壊しに、と彼女は言う』など数多くの作品を監督しているものの日本では上映の機会が稀だった「映画作家」デュラスの真髄がここにある。本作はゴダールとの共同企画の後に執筆された小説を自身で監督したものである。
 
予告篇
 

《料金》
一般1500円 学生・シニア1300円
会員1300円 学生会員・シニア会員1200円

 
※初日7月13日(金)先着10名様に35㎜カットフィルムをプレゼント!

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2012年07月24日

ドキュメンタリー映画 東日本大震災を記憶する証言集・学校篇
「3月11日を生きて 〜石巻・門脇小・人びと・ことば〜」
2012年7月20日(金)〜24日(火)

「3月11日を生きて 〜石巻・門脇小・人びと・ことば〜」(2012/97分/DV)
監督:青池憲司  撮影:一之瀬正史 編集:村本勝
録音:滝澤修 音楽:森拓治 語り:三國裕子 監督助手:尾崎日出夫
製作:『宮城からの報告 〜こども・学校・地域〜』製作委員会
 
2011年3月11日、東日本の太平洋岸一帯を襲った大津波は、宮城県石巻市にも大きな災厄をもたらしました。被害を受けた人びとは、その体験をどのように語り、伝えるのか。ことばは、そのとき、どんな力を持つのか。
この映画は、津波と火災で壊滅的な被害を受けた、石巻市立門脇小学校の児童・教師・保護者が、かつて体験したことのない大地の揺れと、迫りくる大津波の危機を乗り越えて生きた約16時間(11日午後2時46分から12日朝まで)を、37人の「ことば」=証言で紡いだ作品です。

青池憲司監督からのメッセージ
あの圧倒的な津波の被害に立ち向かうには何をもってすればよいのか。それは「ことば」だ、と被災地の人びとはいいます。「おとなもこどもも、自分の体験をことばにすること、それを繰り返し語ること。それがたいせつ。とてもつらいけど」。この映画は、小学生から高齢者まで、人びとが語る「ことば」で3月11日をみつめました。阪神大震災被災地のみなさんには、その「ことば」を聴きとり、観とっていただければと思います。
 
主な作品
『日本幻野祭三里塚』、『合戦』東京都教育映画祭金賞、『ベンポスタ・子ども共和国』日本カトリック映画賞、『琵琶法師 山鹿良之』毎日映画コンクール・記録文化映画賞・文化庁優秀映画作品賞
【阪神大震災関連作品】
記憶のための連作『野田北部・鷹取の人びと』全14部(14時間38分)  
『阪神大震災 再生の日々を生きる』(2時間36分)
【東日本大震災関連作品】
『3月11日を生きて〜石巻・門脇小・人びと・ことば〜』
『タイトル未定作品』(2012年4月撮影終了)2012年8月完成予定
石巻市立門脇小学校児童の震災後の授業を中心に、学校、家庭、地域の人びとが、困難を克服し、再生していく道のりを見つめる長編ドキュメンタリー映画。


《料金》
一般1300円 学生・シニア1000円 高校生以下500円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

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