プログラムPROGRAM
2010 8

日本映画名画鑑賞会
2010年8月1日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


竹中労の仕事 パート1
まぼろしのチャンバラ・グラフィティ『大殺陣 にっぽん剣優列伝』発掘と「日本映画縦断」再考
2010年8月27日(金)〜29日(日)
長らく見ることができず「幻の映画」といわれた『大殺陣 にっぽん剣優列伝』。元祖ルポライター・竹中労の代表作のひとつ「日本映画縦断」から生まれた、その映像版だが、竹中が「神様」と言ったアラカンこと嵐寛寿郎から「怪優」団徳麿まで登場する、ザッツ「チャンバラ・エンタティメント」。
今年、プロデューサーである伊藤公一氏が永眠され、故人も強く望んでおられた再上映の為、フィルムが竹中の弟子・鈴木義昭に託された。この特集は、その偉業を偲ぶとともに、竹中労の仕事の再発見を意図したものである。
 竹中労
  
 

8月28日(土)トーク《並木鏡太郎とマキノ映画》
山際永三(映画監督)×鈴木義昭(ルポライター)

山際永三監督は新東宝撮影所を経て佐川プロ製作・大宝配給『狂熱の果て』で監督デビュー。『チャコちゃん』『コメットさん』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』などの作品を監督し、テレビの黄金時代に活躍した。粕三平らと第一次「映画批評」を編集、実験映画『炎 1960〜1970』の作家としても知られ、石井輝男プロダクションを率いるなど多才で知識と経験豊富な監督である。並木鏡太郎監督の遺稿となった自伝的小説「京都花園天授ヶ丘 マキノ撮影所ものがたり」(愛媛新聞社)の出版に尽力、また遺品を立命館大学アートリサーチセンターに寄贈するなど並木監督との関わりが深い。
 
参考上映「夜討曽我」 (1929/24分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:並木鏡太郎 出演:沢田敬之助、河津清三郎 
並木鏡太郎監督の処女作で、曽我十郎祐成と五郎時致の兄弟が父の仇を討つ有名な曾我物語の映画化。加藤泰が「伊藤大輔 詩と真実」のあとがきで伊藤全作品の写真収集を評価した故・赤井祐男氏が古道具屋の店頭で発見した貴重なフィルムで、赤井氏は並木監督全作品の写真・解説付きの自作アルバムをつくり監督に進呈したことを付記したい。

8月29日(日)トーク《団徳麿と東映京都》
宮崎博(元東映俳優、「チャンバラ人生」著者)×鈴木義昭(ルポライター)

元東映京都撮影所専属俳優の宮崎博は、映画の古都・京都と時代劇の草創期・黄金時代を語り、また撮影所の合理化を語り、その復興への情熱を語る「チャンバラ人生」(白地社)の著者。片岡千恵蔵門下だった宮崎と竹中労の交流は、1966年8月、竹中が東映京都撮影所で争議中の東映俳優労働組合を支援したことに始まる。宮崎は、多くの映画に助演する一方で、戦後時代劇の黄金期でありながら矛盾に苦悩した撮影所にあって、「東俳労」委員長として活躍した。さらには、映画『祇園祭』をめぐっては伊藤大輔監督、竹中らとともに初期の制作運動の中心にあった。竹中の映画論の記念碑的連載「日本映画縦断」では、当時京都の大部屋にあった怪優・団徳麿、マキノゆかりの岡島艶子らを竹中に紹介するなど、強力なブレーンであった。「日本映画縦断」の舞台裏と、その意味するところを知る数少ない映画人でもある。
 
参考上映「野情」 (1928/31分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:後藤秋声 出演:団徳麿、原駒子
悪の数々で捕り手に追われる三鬼平九郎(団徳麿)とその情婦・乙姫お新(原駒子)であったが、お新は世間並みの真面目な所帯苦労がしたかった。そこにお新を慕う男が現れ、平九郎の元を去るのだった。このフィルムは数少ない現存する団徳麿主演の無声映画で『銀蛇』と改題された時代劇映画である。独自の扮装術で様々な役柄を演じた怪優ダントクこと団徳麿は、竹中労の名著「日本映画縦断」のインタビューでその存在を再認識させた。東亜、帝キネ、月形プロ、右太プロ、千恵プロ、新興、マキノトーキー、日活、松竹、東横、東映と渡り歩きピンク映画にも出演するなど、日本映画史を体現した団徳麿の発言から学ぶべきことは多い。

「江戸怪賊伝 影法師」
(1925/80分[16fps]/サイレント/16mm)
指揮:マキノ省三 監督:二川文太郎 原作・脚色:寿々喜多呂九平
出演:阪東妻三郎、高木新平、牧野輝子
それは、バンツマから始まった! 傾向と異端へと疾走する「日本映画縦断」の発端には、バンツマがいる…。阪東妻三郎が演じる「影法師」と呼ばれる義賊が悪を倒し弱きを助ける物語を軸に、影法師を慕う女たち、偽の影法師を登場させるなど、省三、二川、寿々喜多コンビの力量を垣間見ることができる。16mmプリントの欠落部を9.5mmプリントから補足した版を上映。
 
「右門一番手柄 南蛮幽霊」
(1929/99分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:橋本松男 脚色:山中貞雄 原作:佐々木味津三
出演:嵐寛寿郎、頭山桂之助、尾上紋弥
竹中労は言った、「アラカンより他に神はなし」。「聞書アラカン一代 鞍馬天狗のおじさんは」の著者・竹中労と、アラカンこと嵐寛寿郎の縁は深い。アラカンなくして、元祖ルポライターの青春もなかったに違いない。嵐寛寿郎が演じるご存知むっつり右門とおしゃべり伝六、あばたの敬四郎らが繰り広げる右門捕物帖の一篇。殺人と三百両盗難という謎だらけの事件を右門の見事な推理で解決する。山中貞雄が脚本を担当。
  
「欲情の河」
(1967/64分/16mm)プロダクション鷹
監督:木俣堯喬 撮影:荒井誠 編集:沢本完 音楽:河原淳
出演:水城りか、上田明美、佐藤洋、団徳麿、湊武雄
マダガスカルから航海を終え神戸港に帰ってきた船員と高級娼婦との出会いと恋愛を軸に、さまざまな男女関係を絡めて描いたピンク映画。神戸大丸、三宮神社、花時計、六甲山、神戸の夜景、さんちかタウンのネオンなどに加え、大阪城、奈良公園、ドリームランド、平等院と関西ロケを多用している。団徳麿は、娼婦の高校時代の回想シーンに父親役で登場、子供想いの好人物を演じている。やがては東京進出を計る木俣堯喬監督のプロ鷹、関西時代の現存作品。水城りかは、当時のプロ鷹専属女優。
   
「狂った牝猫」
(1968/63分/16mm)プロダクション鷹
監督:木俣堯喬 撮影:荒井誠
出演:水城りか、団徳麿、上田明美、佐藤洋、湊武雄
団徳麿が主演の「ピンク映画」。香港、大阪を回って名古屋空港に到着したミス・パシフィックの山野夕子は、製糸会社の新作発表会に出演するため会場に急いでいた。到着寸前に見知らぬ男に拉致され、夕子の出ない発表会は中止になった。実はその製糸会社の専務(団徳麿)が夕子のために購入しておいたマンションの一室に拉致したのだった。専務と夕子は肉体関係を結びながらライバル会社に身売りするなどの悪行を企むのだが…。関西拠点の独立プロ・プロ鷹のピンク映画に出演したといわれる団徳麿だが、現存する主演作品のフィルムは極めて貴重である。
 
「大殺陣 にっぽん剣優列伝」
(1976/75分/16mm)羅針盤
製作:伊藤公一 監督・脚本・原作:夢野京太郎
撮影・編集:井上修 ナレーション:西村晃
竹中労(夢野京太郎)が情熱を傾けた「浪人街」リメイクの予告篇的意味合いで、映像ルポの一環として作ったチャンバラ映画のアンソロジー。大正から昭和初期にかけて隆盛したチャンバラ活動写真36本の名場面を集め、夢野京太郎の斬新な脚本によって新たな生命が吹き込まれた。銀幕の剣豪たちとともに、マキノ映画を始め映画黄金時代の青春が甦る。だが、76年に公開されて以後、さまざまな理由で忘れられた幻の映画となった。この映画のプロデューサー・伊藤公一は、週刊誌時代から竹中の同志だったが、今年2月1日に永眠。今回の「追悼上映」が浮上した。撮影・編集の井上修はNDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン)のスタッフで、近年も台湾原住民の靖国合祀問題を追いかけた『出草之歌 台湾原住民の吶喊 背山一戦』で健在ぶりを示した。『浪人街』リメイクで竹中と協働中のマキノ雅弘と稲垣浩が監修に当たり、ナレーションには「二代目水戸黄門」、昭和の名優・西村晃が名調子を披露している。
   
「山上伊太郎ノート」
(1978/50分/8mm)
監督:栄華京(河野真吾) 撮影:木内克幸
不世出の天才シナリオライター・山上伊太郎の生涯を追い続けた竹中労。山上の業績を讃えて、またフィリッピン戦線に殉じた山上を偲んで、京都妙心寺に「伊太郎地蔵」を建立した。1977年から毎年「伊太郎忌」を開き、多くの映画人が山上に想いを馳せたが、このフィルムは「第2回伊太郎忌」の記録。竹中労、滝沢一、岡島艶子、関本郁夫などゆかりの映画人が登場する。白井佳夫編集長時代のキネマ旬報に竹中が連載した「日本映画縦断」に触発された若者たちが結成したグループ「なには映画村」。主に十三の博愛社で定期的に時代劇映画を上映するなど意欲的で、後のシナリオライター西岡琢也もメンバーだった。その「なには映画村」が奔走した「伊太郎忌」は現在まで続いている。
 
「わが映画人生 並木鏡太郎監督」
(1990/97分/ビデオ)日本映画監督協会
監督:山際永三
日本映画監督協会が大切な日本映画の「財産」を記録し伝える目的で製作し、映画監督が個人史を語る『わが映画人生』。1988年、沢島忠監督による松田定次監督へのインタビューから始まり、現在も年間6本のペースで撮影が進められている。マキノから新東宝へ時代劇を中心にした娯楽映画一筋に生きた並木鏡太郎監督に、新東宝時代に助監督に付いた経験のある山際永三監督が聞き役を務めた貴重な証言映像。
 
 
『大殺陣・にっぽん剣優列伝』と伊藤公一さんのこと
 新宿の小さなスペースだった。紀伊國屋本店の裏に今もある「アドホックビル」というビルの中にあった画廊兼用の会場は、今はもうない。いつ頃まであったかも、今は記憶にない。そこで『大殺陣・にっぽん剣優列伝』という映画の有料試写会がおこなわれたことだけは、確かだ。五十人位はいただろうか。
 満員だった。この映画が『浪人街』リメークの予告篇になるはずだったのだが…、と竹中が語った。前年から「キネマ旬報」誌上で、熱気を帯びていた『浪人街』リメーク運動、その中心的なツールとして、この映画が製作されたことを忘れることはできないだろう。「年表」を見れば、この映画が完成するのとほぼ時を同じくして、『鞍馬天狗のおじさんは/聞書アラカン一代』『日本映画縦断③山上伊太郎の世界』が上梓されている。その少し前には、深作欣二らが書いた「浪人街・ぎんぎら決闘録」が気に入らないと、自ら書いた「浪人街・天明餓鬼草紙」の脚本を、竹中は仕上げている。風雲急を告げるように、この『大殺陣』が世に送り出された。
   鈴木義昭(ルポライター)
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《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き

 
[関連企画] 「竹中労の仕事 パート2」は来年以降に予定しています。


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